プイヨン・著 『粗い石』 再読


時々、読み返す本があります。

 

F・プイヨンの『粗い石』は、その1冊です。

舞台は、中世のフランス。


物語は、命がけで修道院の再建に取り組んだ、修道士の生涯を描いたもの。

 

この時代、修道士は設計者であり現場監督の立場にあたります。


正直、読み通すまでに、2回ぐらい挫折しています。


しかも、本を買ってから5~6年かかって。

 

2年ぐらい前に、意を決して再挑戦し、力ずくで読破しました。


前半の退屈な内容(?)に苦痛を覚えつつ、分からない部分は飛ばしながら読み進めると・・・。

 

中盤の、主人公のギヨームが設計に苦悶する辺りから、石切り場での職人との格闘、コストや工期の問題、教会上層部との衝突など、だんだんと惹き込まれていきます。

 

そして傷を負ったギヨームの苦悩と、責任感に突き動かされ嵐の中に飛び込む終盤へと、物語は加速していきます。


修道士達は、修道院再建に必要な巨石を採掘し、運ぶ道を舗装することから手をつけます。

 

気の遠くなるような労力と時間、人間臭い様々な雑事を積み重ねて。
トラブルを1つ1つ乗り越えていきます。

 

「あるときは理性が勝ち、あるときは感じや図面の正しさが勝つ。
幾何学と象徴が拮抗し、決まる形は双方の綜合となる。
この瞬間は、重大だが軽やかだ。」

 

建築を造るとは、本当はこういうことだったのか・・・。

 

読み返すたびに、冷や水を浴びせられる感じがします。


私はモデルとなったル・トロネ修道院を、いまだ訪れていません。

 

しかし、将来の訪問を、今から楽しみに想像しています。