幸田露伴・著 『五重塔』 再読


『五重塔』を、7年ぶりに再読しました。

 

読み始めは、やっぱりというか、文語体の表現にとっつきにくさを感じつつ読み進めていくと…。

 

主人公の大工、のっそり十兵衛が、寺の上人様に五重塔を建てさせて欲しいと哀訴、師匠である川越源太との押し問答と決着…、次第に読み慣れ、物語に惹き込まれていきます。

 

そして、十兵衛の鬼気迫る現場作業、受難、塔の完成、嵐のクライマックスと、めくるめく話は展開していきます。


特に興味深かったのは、十兵衛が傷を負った次の日でも、休まずに現場に出る場面。

 

日ごろ十兵衛は、「のっそり」と職人達に陰口を言われつつも、現場をなんとか指揮している。

 

傷を負っても、あえて仕事に出る姿勢によって、荒くれ職人連中をまとめ直し、現場を鼓舞し、塔の完成に漕ぎつける。

 

十兵衛は、自分が職人達にどう見られているか、その機微をよく理解していた。

 

この雰囲気は、私も体験的によく知っています。

 

モノづくりの現場では、最後は理屈ではない事が、あったりするのです。

 

わずか100ページの小説ですが、文豪・露伴の渾身の傑作だと思います☆